金融政策 〜情報化の時代において〜

 

仮想通貨が今までの銀行に置き換わるかもしれません

 国際的な経済危機や金融機構の経済援助が行われる中で、銀行に対する絶対的な信頼について疑問が生まれてきています。

この国自体が支配する紙幣や中央銀行の独占に対する不信感が高まったことにより、ビットコインや他の仮想通貨が生み出されました。

 20年前、インターネットが広まった時、有名な経済学者や銀行家はインターネットの発展により中央銀行の絶対的な存在が揺るがされるのではないかと思い始めていました。彼らの予測は未だに現実のものとなっていませんが、仮想通貨の広まりは彼らの“仮想通貨で支払いや取引が行われるようになり、中央銀行が発行する紙幣への需要がなくなるのではないか”という思いを再熱させました。今がこの疑問について考えるときです。中央銀行の紙幣が存在しない世の中で金融政策は意味をなすのでしょうか。

 現在、仮想通貨というものは脆く、不換紙幣に比べて高いリスクを持っています。また、詐欺や違法行為の発覚などによって市民の信頼もまだ低いでしょう。

 

不足しているもの

 技術の進歩は仮想通貨が抱えるこれらの欠点を解決するでしょう。発展していく仮想通貨と戦うためには、中央銀行は効果的な金融政策を打ち出す、あるいは、仮想通貨の性質を理解し、不換紙幣をより魅力的なものとして作り変える必要があります。

 では、仮想通貨とはどんなものなのでしょうか?これはデジタル版の価値であり、暗号書記法の発達により実現可能となりました。独自の単位で表示され、仲介役なしに両替することができます。 

 仮想通貨は、他の通貨に両替でき、支払いができることにより人気が生まれました。金融政策で支えられた不換紙幣とは異なり、他の人が使うことによって価値が上がるだろうという期待が生まれます。かし、人の信頼によって支えられているため、未だに価格の変動が大きいのが現状です。

 

 

デフレのリスク

 一部の仮想通貨、例えばビットコインでは供給量が限られているためインフレのリスクが抑えられています。しかし、金融制度を安定させる上で重要な3つの点が守られていません。それは、デフレのリスクに対する保護、お金の需要に柔軟に対応する力、貸し手として機能するだけの能力です。

 では、仮想通貨は将来的にも使われるようになるのでしょうか?長く使われることで脆さがなくなり、より良いルールの中で世の中に浸透していくでしょう。安定した通貨はすでに誕生しているのです。
 仮想通貨は他にもさまざまな長所があります。匿名性での支払いや長距離間での取引が可能です。また、取引自体は透明化されています。デジタル経済ではこのような利点がとても効果的であり、マイクロペイメントで多く使われています。
銀行での取引とは異なり、仮想通貨での取引は仲介するものがなく、より高速に行うことができます。つまり、国際取引がより簡単に行えるようになったのです。仮想通貨を使うことにより国際取引が日から秒の単位にまで変わってきています。
 そのため、仮想通貨が特定の地域や個人eコマースの分野においてお金の役割を果たす可能性はこれから拡大していくと考えられます。

支払い方法の変化

 仮想通貨や元帳技術の発展によって、支払い方法がアカウントベースからトークンベースの支払いに変化していくでしょう。

アカウントベースでは、銀行を介して取引が行われていました。しかし、トークンベースでは商品や貨幣の移動が簡略化されます。もし、取引に用いられたものの価値が保障されるなら、相手方に対する信頼など関係なしに取引が行われるようになるでしょう。

 これらの変化は情報化の時代でお金が生産される方法を変える前触れとなっています。信頼の形が紙幣から“もの”へとルネッサンスの時代に逆戻りしているのです。20世紀には、お金というものはお互いの信頼関係の上で成り立っていました。中央銀行が発行する紙幣や基礎貨幣は中央銀行と市民、地方銀行との間の強い信頼関係を示しています。また、地方銀行のお金(補償金を必要とする)は銀行と顧客の信頼関係を示しています。反対に、仮想通貨は、信頼関係や責任に頼ったものではなく、自然界に存在する商品貨幣と同じです。

 なぜ、歴史的に貨幣システムは物々交換から信用貨幣へと移り変わっていったのか、これは多くの経済学者が考えていることです。

もし、仮想通貨が情報化社会において重要な役割を果たしていけば、中央銀行の紙幣への需要が減っていくでしょう。そして、また貨幣システムにおいて大きな変化が訪れるでしょう。

 

独占者

 しかし、このような変化は金融政策に関係あるのでしょうか?中央銀行の紙幣に対する需要が減ると、中央銀行が支配する金利は変わってくるのでしょうか?答えは、イエスです。中央銀行は銀行間で金利を保証することによって金融政策を保っているのです。King氏によると、中央銀行の独占権を奪ってしまうことは金融政策ができなくなることを意味するのです。

 経済学者は中央銀行の責任がなくなった世の中で金利を変動することに反対しています。では、中央銀行は大量の仮想通貨を売買することで金利を変動させる必要があるのでしょうか?

 このような反対意見がある中で、根本的な問題は同じです。“これからの未来について一つだけ疑問に思っていることは中央銀行の金融政策がどの程度の意味を持つのかということです。(Woodford 2000)”

 つまり、もし中央銀行の紙幣が価値のないものとみなされたならば、そして、それらのものが仮想通貨に置き換わったのならば、中央銀行の金融政策は無関係となるのです。発展している経済の米国経済への依存はこれとよく似ています。ほとんどの国内金融システムが海外通貨で成り立っているならば、自国の経済発展と金融政策が完全に切り離されたものとなるからです。

 

競争相手からの圧力

 では、中央銀行はどのように対応するべきなのでしょうか?仮想通貨からの圧力を阻止するにはどうしたら良いのでしょうか?

 まず、中央銀行は不換紙幣をより安定なものにするために努力するべきです。国際通貨基金専務理事のクリスティーヌ・リガンド氏は、昨年イングランド銀行のスピーチにおいて以下のように発言しました。“中央銀行がするべきことは新しい風を取り込んだ上で、これからも効果的な金融政策を打ち出すことです。それは、世間の需要や経済はどんどん変わっていくからです。”現代の金融政策は、一般常識や金融政策に対する知識に基づいています。また、金融政策はビックデータや人工知能といった技術の発展に助けられています。これにより、より正確な経済の予測をすることができるからです。

 二つ目に、国家権力は仮想通貨の使用を制限することで不正を取り締まる必要があります。つまり、マネーロンダリングやテロリストへの資金流出、消費者の保護、仮想通貨取引を行う際の税金などに対して厳密なルールを提示する必要があります。

 三つ目に、中央銀行は合意を得る手段である金銭を魅力的なものとして保っておく必要があります。例えば、中央銀行の紙幣ユーザーに対してデジタルトークンを発行し、現金と銀行内の備えを補うことができるようにします。このような銀行のデジタル紙幣を、仮想通貨と同じように簡単に取引ができるようにするといった方法があります。

 

個人を守る

 中央銀行のデジタル通貨は、強いネットワークシステムが個人に与える独占的な力に対抗できるかもしれません。それは、個人や小さい企業における取引の手数料を減らすことができ、長距離間の取引を可能となり、現金と異なり、単位や種類によって制限されることがなくなるからです。

 このような通貨を用いることで、中央銀行は通貨の発行により利益を得ることができます。そして、政府に儲けを還元することができます。新興市場や発展中の経済において、シニョリッジが彼らの独立のために必要なことなのです。

 中央銀行のデジタル紙幣を発行する際には政策の更新といった様々な審議が必要となってきます。これには、銀行が直面するさらなるリスクを避ける方法なども含まれるでしょう。また、国の経済情勢や技術の発展具合によってデジタル紙幣の普及による短所と長所のバランスが異なってきます。

 情報化の時代において、中央銀行には挑戦とチャンスの両方が存在しています。

中央銀行は、不換紙幣の信頼を保つ必要があり、新しい経済の中で生き残っていかなければなりません。

 

引用記事
”Monetary Policy in the Digital Age”
http://www.imf.org/external/pubs/ft/fandd/2018/06/central-bank-monetary-policy-and-cryptocurrencies/he.pdf

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